目次
結論を先に言おう:
ネット上の無料翻訳アプリは、専門用語の意味を確認するのに重宝すると思います。
英和辞典・英英辞典・和英辞典は、どんなに充実したものでも、収録単語数は数十万個レベルです。
一般的な日常生活で使われるものは網羅できますが、それが英語のすべてではありません。
数多くの専門分野で使われる専門用語を全部合わせると、一千万を超えるといわれます。
辞書でカバーできない部分を翻訳アプリで補えれば、大いに助かります。
iphoneやPCで利用可能な翻訳アプリの最大価値はここにあると考えます。
日本語の英訳がいかに難しいか例を挙げる:
日本語を英語に訳すのは大変な作業です。
翻訳家や通訳にとっても楽な作業ではありません。
言語構造がまったく異なる上に、日本語特有の曖昧さが加わるのですから仕方ないと思います。
専門家ですら難儀するのはナゼか、具体的に例を見ていきましょう。
(以下google翻訳文以外は、「同時通訳が頭の中で一瞬でやっている英訳術リプロセッシング」田村智子著(三修社)から引用)
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日本語
「お手すきの際でけっこうですので」
↓
google翻訳
「Because it ’s fine when you hand.」
↓
分かりやすい日本語に変換
「する時間が出来た時に、やって頂ければ助かります」
↓
正しい英訳
「If you could do it whenever you have the time, that would be most helpful.」
日本語
「身勝手なお願いということは十分承知しているのですが」
↓
google翻訳
「I’m fully aware of selfish requests.」
↓
分かりやすい日本語に変換
「とても大きなお願いをしているということは、分かっています」
↓
正しい英訳
「I know I’m asking you a very big favor.」
日本語
「そこを何とか」
↓
google翻訳
「Somehow」
↓
分かりやすい日本語に変換
「そうして頂くのが難しいのは重々分かっておりますが、あえてこのお願いをしなければならないのです」
↓
正しい英訳
「I understand the difficulty, but I’d still have to ask you this big favor.」
日本語
「せっかくのお話ですが、やはり今回は見送らせていただくということで」
↓
google翻訳
「It ’s a long story, but this time we ’ll leave it off.」
↓
分かりやすい日本語に変換
「そのお申し出は大変有難いのですが、残念ながら今回はパスしなければいけないと思います」
↓
正しい英訳
「I very much appreciate the offer, but I’m afraid I would have to pass on it this time.」
日本語
「どうかその辺をお汲み取り下さい」
↓
google翻訳
「Please draw the neighborhood」
↓
分かりやすい日本語に変換
「今説明した事情を理解して頂ければいいのですが」
↓
正しい英訳
「I hope you will understand.」
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いかがですか。
日常的に使われている日本語をそのままgoogle翻訳アプリにぶちこんでも、ネイティブ相手に真意を伝える英語に変換されないことが分かったでしょう?
どの翻訳アプリを比較しても、精度はお粗末です。
逆に、英語を日本語に訳すのも難しい作業です。
自分で理解できても、自分以外の日本人に誤解なく真意が伝わる日本語にするのは、とても高度な技術です。
プロの翻訳家が訳して出版されたのに、日本語が不自然で違和感を感じながら読まねばならない経験をしたことはありませんか?
上記の通り、日本語と英語の間には、とてつもなく高い壁が存在します。
その障壁を、簡単に確実に乗り越えられる翻訳アプリは存在しません。
今後、AI(人工知能)がどんなに発展しても、翻訳や通訳の仕事がなくなることはないのです。
翻訳アプリが出来ること、出来ないこと:
英単語なら相応しい訳を提示してくれることが多いと思いますが、文脈によって複数の意味を持つ英単語の時は困ります。
短めの簡単な文章ならOKのこともありますが、頼り過ぎは禁物です。
長い文章や会話になればなるほど、訳がトンチンカンになり易いです。
日本語特有の砕けた表現になると、もうお手上げでしょう。
「google翻訳はいい。これは使える」と喧伝する人がいますが、アプリの実力はこの程度です。
私の勤務先で、英語初級者がネットの翻訳ソフトに頼り過ぎて、出てきたものをそのままコピペして会社の文書としてばら撒いてしまい、大問題になったことがあります。
重役がカンカンになって、「以後、ネット上の翻訳機に頼るべからず」と通達を出したほどです。
便利に見えるものを鵜呑みにするのは危険です。
相手にも迷惑が掛かります。
もちろん、自分の信用も失います。
この記事の冒頭でも述べましたが、辞典に乗ってないような専門用語を調べる場合だけに限定した方が無難だと思います。
英単語の意味は英英辞典で調べよう:
英語の文章を読んでいて分からない単語が出てきた時に、翻訳アプリを使うのは悪くありませんが、できれば英英辞典を使うべきです。
翻訳アプリや英和辞典だと、どうしても英語→日本語に変換する癖が付いてしまいます。
長文をすらすら読むには英語の文章を英語のままで理解する必要があります。
いちいち頭の中で日本語へ変換していたら時間がかかってしまいます。
TOEICでは、制限時間内に大量の文章を読まねばなならないので、これは大きな足かせになります。
英英辞典を使って、記載されている例文も含めて読むようにすれば、英語のままで理解する癖が付きます。
ネイティブスピーカーと同じ感覚を身に付けることが出来るツールなのです。
私が愛用している英英辞典について、その使い方や中身を解説した記事があります。
よろしければ、下記リンク先をご覧ください。
【単語帳よりおすすめ】英英辞典の使い方を紹介します
まとめ:
日頃、翻訳アプリを愛用している人には申し訳ありませんが、安易な利用が多くの弊害を引き起こしているため、あえてその危険性を指摘させて頂きました。
一見便利に思えるかもしれませんが、賢く利用するのは意外に難しいのです。
ある程度英語に慣れている人で、自分で最終的なチェックや修正をする力量が要求されます。
最終的な責任は自分で負わねばならないのですから。
この記事が、ネット上のアプリとの付き合い方を見直す契機になれば幸いです。
以上