職場で起こっているTOEIC(トーイック)問題はアナタと無関係か?

TOEIC(トーイック)の普及に伴って増加する誤解・偏見:

私が今の会社に入社したころ、新入社員は全員強制的にTOEICの社内受験(IPテスト)を受けさせられました。
その当時は、日本国内で一年間にTOEICを受ける人は数十万人レベルに過ぎませんでした。
それが今や、約250万人まで増えています(2019年時点)。
テストですから一つの物差しに過ぎないのですが、何かしらの利便性があるため、かなりの勢いで普及しているのです。
これだけ普及すると、猫も杓子もTOEIC状態になります。
意味も解ってないのに、とにかくTOEICに飛びつく。
他の会社もやってるからうちも、というパターンも多いはずです。
必然的に誤解や偏見も増えていきます。
この記事では、実際に私が勤める会社内で見聞きした「TOEICの社会問題」について記したいと思います。

採用担当者の安易なTOEIC頼み:

「今年の新入社員は語学に堪能な者が多い。TOEIC満点ホルダーもいる」
これは、人事担当役員の社内報でのコメントです。
TOEICスコアは、採用時に評価される能力の一部に過ぎないはずですし、しかも、本質的なものではありません。
わざわざそれを前面に押し出して強調する理由は何でしょうか?
今流行りの「グローバル人材の育成」や「英語の社内公用語化」に興味津々のCEOに対して、ご機嫌取りをしたいのでしょうか?
英語学習に消極的な先輩社員たちを焚きつけるためでしょうか?
意図は良く分かりません。

私の勤める会社(メーカー)もそうですが、組織は大きくなるほど官僚化します。
効率は良くなりますが、人の意識が保守化するのです。
「何か問題が起こったときに自分を守るための言い訳をきちんと言えるか?」が最優先になってしまいます。
新卒採用者から退職者が続出したり、何か問題を起こしたりしたとき、「会社の方針通りTOEICスコアを重視して採用しました」と言えることが重要なのです。

上意下達+前例踏襲+右へ倣えの思考停止状態は、さまざまな安易な行動を生み出します。
もちろん、TOEICの点数は低いより高い方がいいのですが、硬直化した採用態度につながっていないか危惧を覚えます。

「TOEIC点数高い=英語で仕事が出来る」という思い込み:

私が所属する部門はエンジニア系なので、概して英語には明るくありません。
TOEICの点数で言えば、平均して300点台でしょう。
実際、英語を日常的に使う仕事ではありませんから不自由することは少ないのです。
そんな環境で、例えばTOEIC600点を取ってしまうと、「すごい英語力だ。英語関係はすべてコイツに任せよう」なんて発想が出てきます。
TOEICの対策勉強をして600点を超えたくらいでは、ネイティブのしゃべってることもよく聞き取れないし、英文だってスムーズに読めません。
もちろん、英会話や英文を作成する能力は別途、実践のなかで身に付ける必要があります。
いきなり過大な期待をされても困ってしまいますよね。

TOEICの受験自体が目的化している:

自分が勤める会社では半年に一回、TOEICのIPテスト(組織内の集団受験)が行われます。
もう30年くらい続いているのではないでしょうか。
最近は、各部門ごとに参加者数のノルマが決められ、英語の勉強もしていない多くの人が強制的に駆り出されています。
殆どの人は英語初心者ですから、TOEICの2時間は苦痛でしかありません。
「二度と受けるかこんなもん!」という本音をよく聞きます。
マークシートの塗り絵だけして、残った時間は寝ている人も・・・
「TOEICは苦行なんだから皆で分かち合うべきだ」という発想になり、多くの職場で順番制が採用されています。
本人の意思・能力・目的と関係なしに、ただ受けさせられているだけ。
とにかく、会社の方針通りに目標人数の社員が毎回受験し、英語力強化への取り組みが継続されていることにしたい訳です。
国際関係の部門ならともかく、その他多くの社員にとっては迷惑でしかありません。

インセンティブが働かない人事制度:

会社側もTOEICの扱いに関しては迷いがあるようです。
ハイスコアを獲得した社員に対しては、「昇格テストで考慮する」という内規があるようですが、曖昧すぎて良く分かりません。
「TOEICの点数が上がれば、それに伴い月々支給される手当(能力給)が増える」なら分かり易いですが、そんな制度が導入される気配はありません。
TOEICの勉強を頑張れば、会社がきちんと評価して金銭的に報いてくれる訳ではないのです。
つまり、インセンティブが全く働かない状態で、ただ一律に「英語!英語!」と言ってるだけ。
「英語の勉強なんてやるだけ損」という本音を隠しながら働いている社員は間違いなく増加しています。

経費削減下でも聖域化しているIPテスト:

最近の大企業は黒字決算でもリストラをするのがトレンドのようです。
リストラとまでは行かなくても、経費削減の要求は年々厳しくなっています。
一円単位で無駄を切り詰める努力は、見ていて涙ぐましいほどです。
しかし、ことTOEICのIPテストに関しては聖域のようです。
受験料は全額会社負担で、しかも勤務時間中にテストを行います。
社員からすれば、お金をもらいながらTOEICを受けているのですから恵まれていますね。
TOEICを社外で個人で受ければ約6000円かかります。
社内受験での拘束時間を3時間とすれば、人件費として約8000円会社が負担していることになります。
半年で300人、年間600人が受けていると仮定すると、会社の負担額は、
(6000+8000)x600=8,400,000円、となります。
TOEICのIPテスト運営に関わっている人事部門担当者の人件費その他も、追加されます。
受けるだけ無駄なヤル気のない人をIPテストから排除すれば、百万円単位のお金が節約できるはずですが、その予定はありません。
しばらくは、前例に倣って惰性でこのままの状態が続くでしょう。
会社の財務状態に余裕があるのは良い事ですね・・・?

まとめ:

私が初めてTOEICと出逢ってから30年は経っていませんが、かなり長い付き合いになります。
その間、社内での実情をつぶさに観察してきました。
もちろん、グローバル企業になるためにTOEICが貢献した側面もありますが、前述のようにマイナス面もたくさんあります。
合理的で、みんなが納得できて、モチベーションアップにつながる施策につなげるのは容易ではありません。
誤解や偏見はなかなか改善されません。

皆さんの会社では、どんな状況ですか?

この記事が、TOEICの有効活用を考えるきっかけになれば幸いです。

以上

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