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英字新聞の記事紹介:ゴーンの声明を読み解く

目次

はじめに:

20世紀の末、日産自動車は2兆円を超える借金に苦しんでいました。

無能な経営陣による長年の放漫経営が原因です。

自分たちは悪者になりたくないので、外国人であるカルロス・ゴーン氏に経営の立て直しを依頼しました。

つまり、丸投げですね。

コストカッターの異名を持つコーン氏がやったことは、リストラなどのコスト削減がメインです。

従業員の削減、系列会社のカット、工場閉鎖、資産の売却・・・

その「努力」の甲斐もあり、2003年、日産の有利子負債は無くなりました。

コストカット以外にも、新車種導入などのブランドイメージ刷新にも取り組みました。

実は、私は1990年代、日産の車(セドリック:Y32)に乗っていました。

デザインがとても気に入っていたからです。

でも、ゴーン氏が実権を持つようになって以降、日産の車に面白みを感じなくなりました。

まあ、個人の好みの問題に過ぎないかもしれませんが・・・

話を戻しますが、ゴーン氏は20年以上に渡って日産のトップに君臨し、経営手腕を振るってきました。

その後の逮捕、失職、長期勾留、取り調べ、保釈、レバノンへの出国については、皆さんは様々なメディアを通して情報を得ていると思います。

レバノン到着した後に発表されたゴーン氏の声明文(原文)が、2019年12月31日付のジャパンタイムズ記事に載っていました。

今回は、その声明文を使って英語の勉強をしたいと思います。

声明文の引用と邦訳

以下、引用します。

引用始め
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Following is the full text of former Nissan Motor Co. Chairman Carlos Ghosn’s statement Monday issued through his U.S. representative.

I am now in Lebanon and will no longer be held hostage by a rigged Japanese justice system where guilt is presumed, discrimination is rampant, and basic human rights are denied, in flagrant disregard of Japan’s legal obligations under international law and treaties it is bound to uphold. I have not fled justice — I have escaped injustice and political persecution. I can now finally communicate freely with the media, and look forward to starting next week.
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引用終わり

以下は、私の日本語訳です。

「元日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏が、アメリカの代理人を通じて月曜日に発表した声明文全文を以下に示す。

私は今、レバノンにいる。今後、腐敗した日本の刑事司法制度に囚われることはない。有罪前提の捜査、差別の蔓延、基本的人権の否定など、順守すべき国際法や条約をあからさまに蹂躙しているのが日本の司法制度だ。私は司法制度から逃げたのではない。不正義と政治的迫害から逃れたのだ。これでようやくメディア関係者と自由に情報共有できる。(記者会見を)来週以降始めるのが楽しみだ。」

首を洗って待ってろよ、ふっふっふ・・・、て感じですかね。

まあそれはともかく、結構、難しい英文だと思います。

スラスラ読んで一発で理解できる人は上級レベルでしょう。

単語の意味を確認しよう

ポイントとなる英単語の意味を確認しましょう。

ちなみに私は、オックスフォードの現代英英辞典を愛用しています。

「former」
元○○。元会長、元カレ、元妻という使われ方をします。

「issued」
この記事では、発表するという意味の動詞として使われています。

「representative」
この記事では、「個人の代理や集団の代表として意見を発表する役割を担う人」を意味します。

「held hostage」
人質になるという意味。辞書を見ると分かりますが、「hold」は多様な使われ方をします。

「rig」
自分が望む結果を得るために不正な手法を使う、という意味の動詞。イカサマをするとも言えます。

「presume」
この文脈では、反証されるまで正しいと見なす、という意味です。
海外では、有罪が証明されるまでは無罪と見なさねばなりませんが、日本では「guilt is presumed」つまり、有罪前提になっているとゴーン氏は言いたいのです。

「rampant」
悪いものが至る所にはびこり制御不能な状態である、という意味。

「flagrant」
人や法律に対して全く敬意を払わず、その行動があまりに大胆なのでビックリする、という意味の形容詞。
反社会的な行為を表現する際に使います。

「disregard」
そんなの大したものではないと考え振舞うこと、軽んじること。

「bound」
法律などに基づき実行する義務がある、という意味の形容詞。

「fled」
fleeという動詞の過去分詞。
危険だと感じるモノから急いで離れる、という意味。

「justice」
正義(=人々を公平に扱うこと)という意味もありますが、ここでは、司法制度(=罪を裁くために使われる法律システム)が正しいでしょう。

「political persecution」
政治的迫害。
日産の経営陣が政治家の力を使って警察・検察を動かし、それによって大変な迷惑をこうむった、と言いたいのでしょう。

「communicate with the media」
「情報の交換をする」ではなく、「メディアと情報を共有する」という意味でしょう。
自分が情報を提供し、それを世に広めてもらう、ということです。

英単語は文脈や状況により意味が変わることが多いです。

面倒臭がらないで、都度、英英辞典を読む癖を身に付けましょう。

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まとめ

今回は、ゴーン氏の声明文を紹介しましたが、私は別にゴーン氏のことは好きではありません。

むしろ嫌いです。

所属する業界は異なりますが、私自身がコストとしてカットされる側の人間ですから・・

でも、日本の刑事司法制度が抱える問題(人質司法、弁護士同席無し、長期にわたる勾留と長時間の拷問、嘘の自白の強要など)を改善する方が重要ですから、ゴーン氏の言い分に耳を傾けることにしました。

これからゴーン氏は、自身の体験と強い信念に基づいて、自分の意見や主張を発表していくことでしょう。

被害者側の視点が国際的に大きくメディアに取り上げられるようになったら、日本の関係者は無視できなくなりますよね。

日本の恥部である冤罪量産システム(=中世の遺物)が、一刻も早く無くなることを願っています。

ニュースで学ぶ、生きた英語。「ジャパンタイムズ・アルファ」

以上